【入館無料】徳富蘇峰ゆかりの「山王草堂記念館」
東京都大田区は、多岐にわたる魅力を持つ地域であり、その中でも歴史と文化の香りが色濃く残る場所として知られています。特に、ジャーナリスト、思想家、歴史家として明治から昭和にかけて活躍した徳富蘇峰ゆかりの「山王草堂記念館」は、彼の生涯と業績を今に伝える貴重な施設です。この記念館は、多くの文人たちが集った「馬込文士村」の一角をなし、訪れる人々に静かで思索的な時間を提供しています。

徳富蘇峰:激動の時代を生きた思想家
徳富蘇峰は、本名を徳富猪一郎といい、1863年に現在の熊本県で生まれました。小説家として知られる徳冨蘆花は実の弟にあたります。彼は同志社英学校で新島襄から学び、生涯にわたる師として尊敬しました。1886年に『将来之日本』を著して文壇での地位を確立し、翌年には民友社を設立。日本初の総合雑誌『国民之友』を発刊し、さらに1890年には『国民新聞』を創刊して社長兼主筆を務めました。当初は一般市民の視点に立った「平民主義」を掲げましたが、日清戦争後の国際情勢の変化を経験し、国家主義へと思想を転換させていきました。

大田区山王と「山王草堂」
1924年から1943年までの約20年間、徳富蘇峰は大田区大森山王の地に居を構え、「山王草堂」と名付けました。この山王草堂で過ごした時期は、彼のライフワークともいえる百巻にも及ぶ壮大な歴史書『近世日本国民史』の執筆において、特に重要な期間でした。この場所で、その大半が書き上げられたと言われています。彼は1943年に文化勲章を受章しましたが、第二次世界大戦後には公職追放の対象となり、1946年に勲章を返上しました。そして、1957年に94歳でその生涯を閉じました。

山王草堂記念館を訪ねて
山王草堂記念館は、徳富蘇峰が暮らした「山王草堂」の一部を保存し、一般に公開している大田区立の記念館です。1986年に静岡新聞社から旧居が大田区に譲渡され、蘇峰公園として整備された後、1988年4月に記念館として開館しました。
館内には、徳富蘇峰が愛用した書物や手紙、文具などが展示されており、彼の深い学識と人柄に触れることができます。特に、『近世日本国民史』の自筆原稿は、その迫力に圧倒されます。かつて旧邸にあった十万冊もの和漢書を収めた「成簣堂文庫」の蔵書は、現在は千代田区にある石川武美記念図書館に移されています。
蘇峰公園は植え込みや梅林、池、東屋などで構成された、侘び寂びを感じさせる落ち着いた雰囲気の庭園です。公園の樹木の中でも特に有名な「カタルパの木」という、蘇峰の生涯の師である新島襄(にいじま じょう)にゆかりのある木(新島襄がアメリカから持ち帰った種から育ったものの三代目)が植えられています。秋には紅葉スポットとしても知られています。

施設案内とアクセス
所在地
〒143-0023 東京都大田区山王1-41-21
交通アクセス
JR京浜東北線大森駅西口から徒歩約15分。
JR大森駅西口より東急バス(馬込循環、上池上循環、新代田駅行きなど)に乗り、「馬込銀座」バス停で下車後、徒歩約5分です。
専用駐車場はありませんので、公共交通機関の利用が推奨されます。
開館時間
午前9時から午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日
年末年始(12月29日から1月3日まで)および臨時休館日があります。来館前には、大田区文化振興協会のウェブサイトなどで最新の情報を確認することをおすすめします。
入館料
無料







